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-追加料で得る贅沢とは-
旅館、ホテルのリニューアルが相次いでいる。浴場にサウナを増設したり、ユニバーサルデザインを導入することで、幅広い年代からの支持を目指す。一方で、高級志向に応えた改装も目立つ。専用フロアの設定や日本の伝統美を生かした客室内装などにより差別化を図り、高級志向の個人客の取り込みを図る。
スパと湯殿併せ持つ浴場施設に―河口湖・若草の宿丸栄―
若草の宿丸栄(山梨県富士河口湖町)は3月1日、大浴場「豪壮アルプスの湯」をオープンした。2カ所の大浴場を1つにしてゆったりとした浴場空間を提供。200平方メートルの浴場には、常連客から人気が高かった銘石づくりの浴槽はそのまま生かし、一度に10人利用できる高温サウナとスチームサウナを併設。水風呂、温泉薬草風呂も設置し「近代的なスパ機能と伝統的な湯殿を併せ持った浴場」(鍋嶋支配人)にした。
浴場施設は車椅子にも対応できるユニバーサルデザインを採用。床には足が滑らないよう細かい溝を掘った素材を使用するなど安全性にもこだわった。床や壁、天井の改修に加え、洗い場は間隔を広げて間仕切りを設けている。
浴場は時間帯による男女入れ替え制のため、1泊で館内に5つあるすべての湯を楽しめる。女性に人気の大浴場「若草の湯」は、浴槽から洗い場が見えないなどの配慮をしている。このほか富士山を目の前に望む「富士の湯」、河口湖が眼下に広がる「湖(うみ)の湯」の見はらし露天風呂や、最上階には総檜造りの湯船から富士の眺めを独占できる貸切展望露天風呂「芙蓉の湯」を持つ。
都心に近く自然が豊かな場所に位置しているため、子どもや年配者を含めた2世代、3世代での利用も多い。館内のバリアフリー化のほか、夕食時には車椅子の高さに合わせたテーブルを客室に用意するなど、車椅子利用者への対応にも心を配っている。
「ただの和風宿泊施設ではなく、人(お客さま)が人(従業員)に癒される宿を目指したい」と同館。
同館は50室、220人収容。ひとり旅プランや「お祝いプラン」も設定している。
大浴場「豪壮アルプスの湯」
”高級志向”に対応 「天領閣別邸」がオープン―高山グリーンホテル―
高山グリーンホテル天領閣(岐阜県高山市、新谷尚樹社長、250室、920人収容)はこのほど、「和風本館」を「天領閣別邸」として改装オープンした。7〜9階を「天領閣別邸プレミアムフロアズ」として、露天風呂付き客室14室とデラックスツインルーム4室を設置。顧客の個人化、高級志向にこたえた。総工費は8億5千万円。
3〜6階の客室も「飛騨の美」「飛騨の文化」「飛騨の心」をコンセプトに改装した。
さらに3階には多目的に使える「ブライズルーム」3室を新設した。通常、セミスイートの客室として使うほか、婚礼時には新婦の支度部屋、会食場などに使用できる。
別邸は専用のフロントを設置。エレベーターの7階以上は専用のカードキーがなければ行けないシステムになっている。
新谷社長は「『和風本館』の開業は昭和57年。当時は団体旅行の全盛期でもあった。今回、旅行形態が団体から個人にシフトする中で、より快適性と居住性を追求するとともに、郷土色豊かな雰囲気を楽しめる施設に改装した」と話している。
露天風呂付き特別和洋室
「天祥の館」を高級化 6月1日改装オープン―山代温泉・ゆのくに天祥―
石川県山代温泉のゆのくに天祥(新滝徳次社長)は10日、6月に創業45周年を迎えるのを機に、同館でもっともグレードの高い「天祥の館」を改装、同月1日、リニューアルオープンすると発表した。
91年オープンした天祥の館(48室)の24室(うち、ロイヤルスイート2室、露天風呂付き客室6室)をまず改装。「客室とテラスを合わせ、約90〜140平方メートルの寛ぎの空間を大切にしたスイートタイプとしてオープンする」という。
具体的には、「素材の力・伝統の美」(同館)をテーマに、和室のほかツインベッド、リビング、デッキテラス(サロン・ド・テラス)を設けるとともに、BGM用のオーディオやテレビ2台など配置。
これに伴い、7〜8階を特別フロア「然 ZEN」とし、客室での食事を基本とするなど「パーソナルサービスをより重視した運営を行う」(同)方針だ。
天祥の館の表示料金に追加料を払えば利用でき、例えばプライベートダイニング付きロイヤルスイートの場合、追加料は3万1500円となる。
また、残り24室も手を加え、7月1日にリフレッシュオープンする。総投資額は約3億円。
国内宿泊旅行が低迷する中、滞在日数の拡大が課題だ。国土交通省は06〜07年度の2カ年、旅館の泊食分離などを主要テーマとする宿泊産業活性化モデル事業を8地域で実施した。参加地域の1つ、長崎県の平戸は、旅館が泊食分離を取り入れることで、観光協会が着地型の旅行商品を造成、地域を挙げた滞在型観光の実証事業に取り組んだ。滞在日数に値する旅行目的の提案と、自由度の高い食事の提示を通じて、3連泊の参加者を集め、滞在型観光の確立に手ごたえをつかんだ。
平戸は、2カ年継続でモデル事業に取り組んだ。07年度事業では、前年度に実施した泊食分離に関する実証実験を発展させ、泊食分離に基づいた3泊4日の滞在型商品を開発。旅行業法の省令改正で業務範囲が拡大されたのを機に、第3種旅行業に登録した平戸観光協会が造成、販売した。
商品名は「名山歩いて、名産食べて、平戸の冬旅」。今年1月17日〜3月20日の期間に催行した。旅行代金は、ガイド付きの山歩きと町内散策、3泊3朝食付きの内容で1万9800円。宿泊施設は、それぞれ100室前後の客室を持つ旅館3軒。3泊とも同じ宿の滞在で、夕食を分離し、宿泊客の好みに応じて宿や飲食店から自由に選択できるようにした。
観光資源に恵まれる平戸でも、3連泊の旅行者を誘致するのは容易ではない。そこで旅行目的を山歩きに絞り込み、福岡エリアの中高年層を狙った。宣伝にも力を入れた結果、7回の催行で92人の参加者を集めた。
平戸観光協会の赤木望事務局長は「平戸に3連泊するプランとしては、まずまずの成果。山歩きをメーンテーマにすることで、滞在期間を満喫してもらえたようだ。3泊以上の滞在には、滞在時間を必要とする明確な目的の提案が欠かせない。泊食分離に基づく滞在型商品づくりに向けて、地域の素材、旅行環境を洗い直したい」と語った。
地域活性化へ
一方、泊食分離に対するアンケートの結果は、食事の分離を「良かった」と答えた参加者が64%を占め、「悪かった」は5%にとどまった。実際に夕食をとった場所は、街の飲食店が61%、宿泊した旅館も39%だった。
泊食分離は参加者におおむね好評だったが、「街の飲食店に関する詳しい情報提供が欲しかった」との指摘があった。また、食事を分離しても約4割は宿の食事も利用したが、「宿の食事は年配者には量が多い。量も、値段も選べるとよい」といったコメントが寄せられた。
受け入れ旅館からは、「食事の分離は時代の流れで必要性を実感している」「選択肢のある宿のメニューを検討したい」などの感想が出た。
モデル事業に参加した国際観光ホテル旗松亭の木下隆靖社長は「泊食分離を考える上で、重要なのはお客さまの嗜好とのミスマッチを解消することだ。選択肢を提示し、料金を明示することは、消費者へのアピールにもつながる」と指摘。泊食分離には宿泊客の欠食による利益率の低下、食事提供の固定費の問題なども指摘されるが、「団体旅行の全盛期とは違い、取り組み方はあるはず。1泊2食付きの形態をなくすわけでもない」と話した。
また、泊食分離というプランは、旅館単独の取り組みでは旅行者の満足度は高まらない。旅館と街の飲食店、旅館と旅館など、地域の特性に応じて宿泊と食事にさまざまな組み合わせが必要。これまで以上に、異業種間、事業者間など地域の連携が重要になってくる。
平戸の場合、モデル事業の推進にあたって、地域の飲食店や観光施設に参画を求めるなど、泊食分離に対する地域の意識づくりにも取り組んだ。「泊食分離により宿泊客が街を歩き、お金を落とすようになれば、まちづくりに対する地域の意欲は高まる。宿は地域観光の“プラットフォーム”であるべき。中長期の視点で観光地全体の発展につなげる発想が重要だ」(木下社長)。
国民1人当たりの国内観光旅行の宿泊日数は、06年度で2.72人泊、前年度から0.17ポイントダウンした。過去4年間でみても3泊に届いたことがない。政府の観光立国推進基本計画に掲げた2010年度の目標値は4泊。泊食分離に基づく滞在型観光は、滞在日数と消費額の拡大を通じて地域を活性化させるアプローチの1つだ。地域を挙げたビジネスモデルづくりが期待されている。
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